「いつでも使える」と、意外と使わない。Fable 5とミスタードーナツが教えてくれた人間心理

Claude Fable 5が、正式にサブスクリプションの対象になった。

以前は「試用期間が終わる前に使い倒さないと」という空気があった。期限もトークンも意識していたので、「これはFable案件だ」と思う仕事を優先的に回していた。

ところが、いざ「いつでも使える」状態になってみると、不思議なことが起きた。

あまり使わない。

もちろん、通常の作業に毎回投入すればトークンは減る。だから「本当に難しい設計や調査だけに使おう」と考える。

しかし、そうやって待っていると、案外「ここぞ」という場面はやって来ない。

日常の仕事の大半は、OpusやSol、あるいはCodexで十分終わってしまう。

結果として、「いつでも使えるから後で使おう」が積み重なり、Fableの出番が思ったほどない。

試用期間中のほうが、よほど積極的に使っていた気がする。


以前、Anthropicには計算資源が足りないのではないか、という話題があった。

そのため、「本当にサブスクで提供できるのだろうか」と少し心配していた。

しかし、少なくとも私が使っている範囲では、今のところ大きな問題は起きていない。

もちろん、これはサンプル数1の感想に過ぎない。

たまたま私の利用頻度が低いだけかもしれないし、全体の利用状況とは全く違う可能性もある。

だから客観的な結論ではない。


そう考えていて、ふと思い出したことがある。

数年前まで、家の近所にミスタードーナツがあった。

歩いて数分。

いつでも買いに行けた。

……だから、ほとんど買わなかった。

せいぜい年に一回くらいだったと思う。

ところが閉店してしまった。

今では近所にはなく、出かけた先で偶然見つける存在になった。

すると不思議なことに、見かけるたびに買ってしまう。

体感では月に一回くらいのペースになっている。

近所にあった頃より、明らかに購入頻度は増えた。


心理学では、**希少性の原理(Scarcity Principle)**という考え方がある。

手に入りにくいものほど価値を感じ、逆に、いつでも手に入るものには魅力を感じにくくなるという、人間にはよくある認知バイアスだ。

限定品に弱い。

期間限定に弱い。

「残りわずか」に弱い。

ECサイトが「あと3点です」と表示したがるのも、この心理を利用している。

そしてどうやら、AIも例外ではないらしい。

「今しか使えない」と思っていた頃は、Fableを積極的に使っていた。

「いつでも使える」と思った瞬間、急に温存し始める。

冷静に考えると、使えるなら使ったほうが得なのに、人間の頭はそんなに合理的にはできていない。

人間というのは、本当にわがままな生き物である。

Fableも、ミスタードーナツも同じだった。

近くにあるうちは見向きもしないのに、なくなった途端に恋しくなる。

どうやら一番賢くないのは、AIではなく私らしい。