優秀な社員ほどリストラされる? 会社に長く残るための意外な生存戦略
先日、少し興味深い話を目にした。
企業が業績不振に陥ったとき、必ずしも仕事のできない社員からリストラされるわけではない。むしろ、優秀で給料の高い社員が真っ先に狙われることがあるという。
普通に考えれば逆だろう。会社が苦しいときこそ、優秀な人材を残すべきではないか。
しかし、短期間で人件費を大幅に削減しなければならない状況では、経営陣が見ているのは社員の能力ではなく、給与明細の数字だったりする。
優秀だからこそ、切られる
理由は単純だ。
高給取りを一人辞めさせれば、給料の安い社員を何人も辞めさせるのと同じ削減効果が得られる場合がある。退職交渉の人数も減らせる。
さらに、経営陣にとって都合のいい理屈もある。
「彼ほど優秀なら、次の会社でもすぐに活躍できるだろう」
実に思いやりのある話だ。ただし、その思いやりは、なぜか会社に残す方向には働かない。
会社に余裕があるときは「優秀な人材こそ宝だ」と言い、業績が悪化すると「優秀だから外でもやっていける」と言い始める。
優秀であることが、雇用を守る理由にも、雇用を切る理由にもなる。
実に便利な評価基準である。
MBAで聞いた、機械的なリストラの話
以前、MBAの授業で、外資系企業に勤めていた先生から興味深い話を聞いた。
その先生は、かつて社員のリストラを担当した経験があった。
まず社員を全員リストアップし、上から順番に退職を打診する。条件に応じれば削減目標に一歩近づく。応じなければ次の人へ進み、一巡しても目標に届かなければ、また交渉を続ける。
そこには、個々の社員の能力や貢献度を細かく評価する余裕などなかったという。
会社が必要としていたのは、優秀な人材の選別ではなく、期限までに決められた人件費を削減することだった。
昨日まで会社を支えていたベテラン社員も、経営が追い詰められればExcelの一行に過ぎなくなる。
リストラを打診されたら、まず時間を稼ぐ
では、自分が対象になったらどうするか。
私なら、まずその場では退職に同意しない。
日本では、退職を勧めることと、一方的に解雇できることは別問題だ。退職勧奨に応じる義務はなく、解雇にも法的な制約がある。
退職金の上乗せ、退職時期、有給休暇の扱い、再就職支援など、交渉できる条件は確認する。
そして、確保した時間で次の職場や案件を探す。
会社側は早く人員整理を終わらせたい。社員側は少しでも有利な条件で次に進みたい。
ここで大切なのは、会社への忠誠心を訴えることより、自分の条件を冷静に守ることだろう。
ただ、現実の私はフリーランスなので、このようなことをしても無駄である。契約終了のお知らせで終了だ。
最も生き残るのは「そこそこ優秀な社員」?
もう一つ面白い説がある。
リストラされにくいのは、突出したハイパフォーマーでも、仕事のできないローパフォーマーでもなく、中間にいるミドルパフォーマーだというのだ。
統計的に確立された法則とまでは言えないが、理屈としては興味深い。
仕事はそれなりにこなす。周囲との関係も悪くない。給料も極端に高くない。
会社にとって、わざわざ辞めさせる理由がない存在だ。
一方、優秀な社員は昇進や昇給によって人件費が高くなりやすい。経営状況によっては、それが逆に弱点になる。
長く同じ会社に居続けることを最優先するなら、必要以上に目立たず、適度な評価を維持するという戦略にも合理性はある。
出世しないことが、最善の出世戦略になる?
私たちは、仕事で成果を上げ、昇進し、給料を増やすことが成功だと教えられてきた。
しかし、会社員としての成功と、会社に長く居続けられることは、必ずしも同じではない。
高い市場価値を身につけ、いつでも転職できる状態を目指すのか。それとも、今の会社で無理なく長く働くことを優先するのか。
どちらも一つの生存戦略だ。
後者を選ぶなら、給料を上げすぎず、責任を背負いすぎず、仕事はそこそこきちんとこなす。
会社にとって、いなくなると少し困るが、辞めさせても大して経費削減にならない社員。
そんな存在が、案外しぶとく生き残るのかもしれない。
会社が求めるのは優秀な社員だという。しかし、会社が苦しくなったときに求められるのは、安い社員だったりする。