頑張る社員が会社をダメにする?──人手不足を解決させない犯人

昔、どこかで読んだ4コマ漫画が妙に記憶に残っている。

ある職場で、4人いた社員のうち1人が辞めてしまった。そこで熱血社員が立ち上がる。

「みんなで頑張って、この危機を乗り切ろう!」

ところが、残りの2人はまったく乗り気ではない。

仕方なく熱血社員は、辞めた社員の分まで引き受け、猛烈に働き始める。

すると、ほかの2人がこう言った。

「あんたが頑張ったら、会社は新しい人を補充してくれないよ」

「私たちは今まで通りにしか働かないから、結局あんただけが2倍働くことになるよ」

それを聞いた熱血社員は、即座に余計な仕事をやめた。

実に見事な4コマ漫画である。

頑張るほど人員補充が遠ざかる

この漫画、笑い話のようだが、会社組織の本質を突いている。

社員が1人辞めたのに、残りの3人が必死に働いて以前と同じ成果を出してしまったら、経営者はどう考えるだろうか。

「なんだ、3人でも回るじゃないか」

人件費まで削減できたのだから、経営上は大成功である。

現場がどれだけ苦労したかなど、数字には表れない。こうして、3人で回すことが新しい標準になる。

そして次に誰かが辞めたら、今度は2人で頑張ることになる。

社員の責任感を利用した、実に効率のよい人員削減システムである。

人手不足は誰の責任なのか

そもそも、社員が辞めて仕事が回らなくなったのであれば、それは経営側が解決すべき問題だ。

人員を補充するのか、仕事を減らすのか、システム化するのか。それを判断するのが管理職や経営者の仕事である。

ところが、日本の職場では、なぜか現場の根性で解決しようとする。

「今が踏ん張りどころだ」 「みんなで協力して乗り切ろう」

聞こえはいいが、いつまで踏ん張ればよいのか。

人が減ったまま仕事量が変わらないのであれば、いくら頑張っても問題は解決しない。むしろ、頑張ることで問題を見えなくしている。

頑張らないことも仕事のうち

私は、こういう状況では無理に仕事を回さないことも重要だと思っている。

わざと手を抜く必要はない。自分の担当業務を普通にこなし、それ以上の仕事は引き受けない。

人員不足によって処理できない仕事が発生するなら、その事実を上司に報告すればよい。

現場が無理をして納期を守り続ける限り、経営側には人員を補充する理由が生まれない。

仕事が回らないという事実を、そのまま見せる必要がある。

本来、管理職が頭を悩ませるべき問題を、現場の自己犠牲で解決してはいけない。

真面目な社員ほど損をする

あの4コマ漫画で面白いのは、冷めた態度の2人が、実は最も合理的な判断をしていたことである。

一方、熱血社員は会社のために頑張ったつもりが、自分の仕事を増やし、人員補充の可能性まで潰そうとしていた。

しかも、こういう人間が職場に1人いると、周囲にも同じ努力を要求し始めることがある。

「あいつは頑張っているのに、お前たちは何をしているんだ」

会社が解決すべき人手不足が、いつの間にか社員同士の努力不足を責め合う問題にすり替わる。

そして、頑張っている本人が疲れ果てて辞めれば、また人手不足になる。

会社のために頑張った結果、人員補充を阻止し、最後は自分まで退職する。

経営者にとっては、最後まで人件費削減に協力してくれる、実にありがたい社員である。