応援しなかった地域には予算を減らす? 政治家の恩返しと仕返し

少し前まで政党助成金の問題で騒いでいたと思ったら、今度は農林水産大臣の過去の発言が問題になっている。

前回の選挙で自分を応援しなかった自治体に対し、「予算を削ってやる」という趣旨の発言を後援会でしていたという話だ。

本人は「そんな発言をした記憶はない」と説明している。

政治家の記憶というのは便利なもので、選挙で受けた恩義はいつまでも覚えているのに、不都合な発言はきれいに忘れられるらしい。

もっとも、発言の真偽はさておき、私は別のことを考えた。

そもそも政治家が支持者に利益をもたらすのは、そんなに悪いことなのだろうか。

政治家は地元に金を持ってきてナンボ

ある政治評論家が、この件を厳しく追及しすぎると、政治家への陳情そのものを否定することになりかねないと指摘していた。

これは確かにそうだと思う。

道路を整備してほしい。農業に補助金を出してほしい。新しい施設を作ってほしい。

こうした要望を国に届けるのも国会議員の仕事である。

「先生のおかげで予算がつきました!」

「いやいや、地元のためですから」

そして次の選挙では、

「先生にはお世話になったから」

と一票を入れる。

実に分かりやすい。

これを全部利益誘導だと批判したら、地方の政治家はかなり困るだろう。

選挙のときだけ地元に帰ってきて、握手して名前を連呼するしかなくなる。

恩返しはよくて、仕返しはダメなのか

応援してくれた地域の要望を優先する。

これは政治の現実として、ある程度理解できる。

ところが、応援しなかった地域の予算を削るとなると、話が変わる。

前者は恩返し。後者は仕返し。

どちらも選挙結果と予算を結びつけているが、地域の要望を聞いて予算獲得に努力することと、行政権限を使って気に入らない地域を冷遇することは同じではない。

政治家という職業は、支持者のために働くことを期待されながら、同時に支持者以外にも公平であることを要求される。

なかなか難しい商売である。

大臣になっても選挙の恨みは忘れない?

ただ、国会議員と大臣では話が違う。

地元選出の議員が地元の利益を主張するのは分かる。しかし、大臣は国全体の行政を預かる立場だ。

もし選挙の恨みを予算配分に持ち込んだら、これは困ったことになる。

道路が壊れていても、

「あの地域は前回、俺を応援しなかったからな」

農業が苦境に立っていても、

「あそこは敵方だったからな」

これでは政策ではなく、単なる人間関係である。

しかも、使っているのは自分の金ではない。

自分の財布で恩返しをするなら美談だが、国民の財布で恩返しと仕返しを始められてはたまらない。

いっそ予算も選挙公約にしたらどうか

今回の発言が事実なのか、実際に予算配分に影響したのかは、確認する必要がある。

ただ、支持者の要望を聞くのは政治活動。支持者に利益をもたらせば実績。しかし、敵対者への報復に使えば権力の私物化。

同じ予算でも、目的と使い方で意味が変わる。

いっそのこと、選挙のときに予算配分まで公約にしてしまえばどうだろう。

「当選したら、応援してくれた地域には道路を整備します!」

「応援しなかった地域は、次の選挙まで我慢してください!」

有権者も必死になるだろう。

政治への関心も高まり、投票率も上がるかもしれない。

ただし、選挙に負けた地域の住民は、次の4年間、道路の穴を避けながら民主主義のありがたさを噛みしめることになる。