宇宙人も「南無妙法蓮華経」を唱えるのか?──宇宙規模の宗教にツッコミを入れてみる
先日、日蓮系の宗教について語っている動画を見ていたら、なかなか興味深い話題が出てきた。
「宇宙人も南無妙法蓮華経を唱えるのか?」
なんとも壮大なテーマである。
日蓮系の宗教では、「南無妙法蓮華経」を宇宙の根本法則や普遍的な真理と結びつけて説明することがある。
宇宙の根本法則というからには、当然、地球だけの話ではないはずだ。
ここからは私自身の疑問なのだが、では遥か彼方の銀河系に住む宇宙人も、毎朝仏壇に向かって「南無妙法蓮華経」と唱えているのだろうか。
想像すると、なかなかシュールな光景である。
宇宙人は漢字を知っているのか?
そもそも「南無妙法蓮華経」という言葉自体が、地球の歴史と文化に深く依存している。
「南無」は古代インドの言葉に由来し、「妙法蓮華経」はサンスクリット語の経典名を漢訳したものだ。
つまり、インドで仏教が生まれ、中国で経典が翻訳され、日本で日蓮という僧が題目として広めたという歴史があって、初めて成立する言葉なのである。
では、宇宙人も同じ歴史をたどったのか。
宇宙人にもインドがあり、中国があり、鳩摩羅什がいて、最後に日蓮が登場したのだろうか。
しかも、宇宙人が使う言語も漢字文化圏と同じらしい。
宇宙の根本法則にしては、ずいぶん地球のローカル事情に詳しい。
そもそも宇宙人に口はあるのか?
さらに根本的な問題がある。
宇宙人が人間と同じように声を出せるとは限らない。
口がないかもしれない。音声ではなく光や電気信号で会話するかもしれない。そもそも個体同士でコミュニケーションを取る必要すらない生物かもしれない。
そんな相手に「南無妙法蓮華経を唱えなさい」と言われても困るだろう。
宇宙人からすれば、「まず口という器官を説明してくれ」という話になる。
もっとも、宗教側もそこは柔軟に対応するかもしれない。
「宇宙人は心の中で唱えているのです」
なるほど。では心がない宇宙人はどうするのか。
「宇宙の真理なので、存在そのものが唱えているのです」
ここまで来れば無敵である。
何を言われても説明できる理論は、裏を返せば何も説明していないのと同じだ。
宇宙の真理なのか、地球の文化なのか
そもそも、宇宙に普遍的な法則が存在すること自体は不思議ではない。
重力や電磁気力は、地球でも遠くの銀河でも基本的に同じ法則に従う。
しかし、だからといって宇宙人がニュートンの名前を知っている必要はない。
同じように、仮に仏教が何らかの普遍的な真理を捉えていたとしても、宇宙人が「南無妙法蓮華経」という日本語の題目を知っている理由にはならない。
ここを混同すると、途端に話がおかしくなる。
宇宙の真理を発見したという話と、宇宙のどこでも同じ宗教が信仰されているという話は、まったく別物なのだ。
元の動画では、量子力学の波動が南妙法蓮華経のリズムと一致する、という謎理論に流れていったが、あまりにもアホすぎるのでここでは紹介しない。
宇宙人に布教する日は来るのか
将来、人類が本当に宇宙人と接触する日が来たら、宗教界はどう対応するのだろう。
宇宙人にも仏性があるのか。宇宙人も成仏できるのか。そもそも宇宙人に仏教を布教する必要があるのか。
考え始めると、疑問は尽きない。
しかし、私が一番気になるのは別のことだ。
もし宇宙人が地球にやって来て、開口一番、流暢な日本語で「南無妙法蓮華経」と唱え始めたらどうなるか。
日連系の宗教関係者は大喜びするだろう。ついに宇宙の真理が証明された、と。
だが、私なら真っ先にこう疑う。
「お前、本当に宇宙人か? どこかの宗教団体が仕込んだ着ぐるみじゃないだろうな?」