160km/hはもういい。ストライクを投げてくれ──Opus 4.8を使って思ったこと

Claude Codeを日常的に使っていると、新しいモデルが出るたびに少しワクワクする。

「今度こそ、さらに賢くなったのではないか。」

そんな期待を抱きながらアップデートする。

だからこそ、Opus 4.8にはかなり期待していた。

実際、最初に触った印象は悪くなかった。むしろ、「これはかなり来たな」と思ったくらいだ。

しかし、毎日仕事で使っていると、第一印象だけでは見えないものが見えてくる。

そして私の評価は、少しずつ変わっていった。

最初は「これは手放せない」と思った

Opus 4.8で特に印象的だったのは、Dynamic Workflowsの考え方だった。

単純にコードを書くだけではなく、タスクを分解し、必要に応じて流れを組み立てていく。その発想自体は非常に面白かった。

「これは仕事のやり方そのものが変わるかもしれない。」

そう思わせるだけのインパクトは確かにあった。

実際、うまくハマった時の性能は見事だった。

複雑な仕様変更も一気に整理し、人間が「ああでもない、こうでもない」と悩むような部分まで先回りして考えてくれる。

「ああ、もう後戻りできないな。」

そんな気分にさえなった。

しかし、毎日使うと違う景色が見えてきた

ところが、使い続けるうちに違和感が増えていく。

やたら賢い日がある。

と思えば、翌日は信じられない勘違いをする。

レスポンスが途中で切れる。

突然接続エラーになる。

さっきまで理解していた前提を、数分後には忘れている。

野球で例えるなら、

160km/hは出る。

しかし、

ストライクゾーンにはなかなか来ない。

能力は誰も疑わない。

ただ、監督としては試合では使いにくい。

手が付けられない快投を見せる日もあるが、突然ストライクが入らなくなって崩れる日もある。

開発現場で欲しいのは、毎回160km/hではない。

140km/hでもいいから、毎回ストライクを投げてくれる投手なのである。

結局、私は4.7へ戻した

最終的に私が選んだのは、Opus 4.7だった。

派手さでは4.8に及ばない。

しかし、狙ったところへ投げてくれる。

毎日仕事で使うなら、この安心感は想像以上に大きい。

AIは一回の神回答より、

毎日コンスタントに期待通りの仕事をしてくれる方が価値がある。

業務では「たまに120点を出すAI」より、「毎回80点を取ってくれるAI」の方がはるかに頼りになる。

今振り返ると、少し納得できる

あとから時系列を振り返ると、少し違う見方もできる。

Opus 4.8が公開されたのは5月28日。

その約2週間後には、AnthropicはFable 5を発表した。

当時のFableは、最初からサブスクリプションに含めるモデルではなく、使用量課金を前提とした特別なモデルとして展開する構想だったように見えた。

ここから先は、完全に私の推測である。

もし「Fableは別料金です」という戦略を取るのであれば、当然ユーザーからは「では、Maxを契約するメリットは何なのか」という不満が出ることは予想できたはずだ。

その不満を少しでも和らげるために、先にOpus 4.8を投入し、「普段使いのモデルもこれだけ進化しました」と示したかった。

もしそんな判断があったのだとすれば、Opus 4.8が少し荒削りだったことにも説明がつく。

もちろん、Anthropicがそんな事情を公表した事実はない。

だからこれは、一人のユーザーとして使い続けてきた私の勝手な推測にすぎない。

ただ、実際に使ってみると、Opus 4.8からは「能力は高いが、まだ十分に磨き込まれていない」という印象を受けた。

もしこの推測が当たっているなら、Opus 4.8は性能不足だったのではない。少しだけ、一軍に上げるのが早かったのかもしれない。

Fable 5が現れて見えたこと

その後、Fable 5を使う機会があった。

さすがに難しい仕事では一段上だった。

複雑な設計や、多段階の推論。

長時間考え続けるような仕事では、やはりFable 5は強い。

ただし、毎日使うには価格も計算資源も重い。

だから私は、

難しい仕事はFable。

普段の仕事はOpus。

そんな住み分けになるだろうと思っていた。

ところが、その「普段担当」のOpusが、たまに暴投する。

これでは安心して任せられない。

Opus 5に期待するもの

だから、次のOpusに期待することは意外とシンプルだ。

もっと速くしてほしいわけではない。

もっと難しい数学が解けるようになってほしいわけでもない。

欲しいのは、

コントロールである。

毎回同じ品質で返してくれること。

途中で暴走しないこと。

昨日できたことが今日もできること。

エンジニアにとって一番ありがたいのは、その「普通」である。

AI業界は、新しいモデルが出るたびにベンチマークの数字を競う。

しかし現場では、

「今日はちゃんと最後まで仕事してくれるかな」

の方が、ずっと重要だったりする。

160km/hはもう十分見せてもらった。

次は、ど真ん中でなくてもいい。

アウトローでも、インコースでもいい。

とにかく、ストライクを投げてほしい。

それだけで、こちらの生産性はかなり上がる。

もっとも、毎回アップデートのたびに「今度こそは」と期待してしまう私も大概である。

AIは毎月学習している。

そして私は、毎月同じ期待を繰り返している。