昔の「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」を見たら、普通にタクシーに乗っていた
先日、テレビで『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』のかなり初期の回を再放送していた。
この番組といえば、路線バスだけを乗り継いで3泊4日でゴールを目指す、テレビ東京の人気企画である。
バスがつながっていなければ歩く。
ひたすら歩く。
出演者が疲れて文句を言い始めても歩く。
場合によっては何キロも歩く。
それでも4日でゴールにつかなければ失敗である。
もはや
「これ、バス旅というより徒歩旅では?」
と思うことすらある。
ところが初期の放送を見ていて驚いた。
バスが途切れた。
さて、どうするのか。
普通にタクシーに乗ったのである。
「ここはバスがないのでタクシーで移動します」
みたいな感じで、特に重大なルール違反を犯した雰囲気もない。
私はテレビの前で、
「えっ、乗っていいの?」
となった。
昔はずいぶん優しい番組だった
今の感覚なら、バスがなければ徒歩である。
10キロ先にしか次のバス停がない。
歩く。
峠がある。
歩く。
雨が降る。
それでも歩く。
それがこの番組だと思っていた。
しかし初期には、バスがつながらない区間でタクシーを利用することがあった。
調べてみると、シリーズ初期には現在ほどルールが固まっておらず、タクシーを使ったケースがある。その後、第5弾あたりからタクシーを使わず、バスがなければ歩く現在のスタイルが定着していったようだ。
考えてみれば、長寿番組だって最初から完成形だったわけではない。
最初は、
「路線バスを乗り継いで旅行したら面白いんじゃない?」
くらいだったのかもしれない。
バスがなければタクシー。
実に常識的である。
そして常識的だからこそ、たぶんテレビとしては少し物足りない。
タクシーに乗ったらドラマが終わる
もし現在もタクシーOKだったらどうなるだろう。
バスが途切れる。
「ああ、ないですね」
「じゃあタクシー呼びましょう」
終了である。
視聴者としても、
「まあ、最悪タクシーに乗ればいいし」
と思ってしまう。
これではゴールできるかどうかの緊張感がない。
ところが、
「タクシー禁止。バスがなければ歩いてください」
となった瞬間、話が変わる。
バス停まで8キロ。
最終バスまであと2時間。
間に合うのか。
出演者は疲れてくる。
会話もだんだん減ってくる。
そして、そのうち文句を言い始める。
面白い。
考えてみれば、この番組の名場面のかなりの部分は、バスに乗っているときではなく、バスに乗れなくて困っているときに生まれている。
なかなか皮肉な番組である。
「歩かせたら面白かった」のではないか
なぜ途中からタクシーを使わなくなったのか、明確な理由は分からない。
なので、ここからは完全に私の想像である。
初期のどこかで、バスがうまくつながらず、タクシーも見つからず、出演者が長い距離を歩くことになった。
疲れる。
文句を言う。
道を間違える。
それでも歩く。
ようやくバス停に着く。
そして制作スタッフが放送後の反響を見て、
「あれ? 歩かせたほうが面白くない?」
と気づいたのではないだろうか。
もしそうなら、かなり大きな発見である。
路線バスの番組なのに、成功の鍵はバスではなかった。
バスがないことだったのである。
もちろん出演者にとっては、たまったものではない。
初期の出演者なら、
「昔はタクシー乗れたんだけどなあ」
と言いたくなるだろう。
しかし視聴者は、そんなことは気にしない。
今日もテレビの前で、
「あと7キロなら歩けるだろ」
などと無責任なことを言う。
自分なら絶対にタクシーを呼ぶ距離である。
しかし『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』の場合、タクシー禁止が決定的だった。
タクシーを取り上げたら、視聴率まで歩き始めたのである。