「米軍は出ていけ。でも日本は守ってくれ」——自主防衛という格好いい言葉の請求書
また米兵が沖縄で事件を起こしたらしい、今度は強盗殺人だそうだ。
沖縄で米軍人による事件が起きるたび、ほとんど同じ光景が繰り返される。
沖縄県が抗議する。
日本政府が「米側に強く申し入れた」と発表する。
米軍が「遺憾」「再発防止」を表明する。
そして、しばらくするとニュースから消える。
何十年も続いている日本の伝統芸である。
なぜ抜本的に変わらないのか。
理由は単純だ。
日本は米軍に出ていってほしくないからである。
中国や北朝鮮などを考えれば、日米同盟は日本の安全保障の根幹である。
だから「米兵の事件は許せない。しかし米軍にはいてほしい」という苦しい立場になる。
「出ていけ」と本気で言って、本当に「分かりました」と言われても困るのである。
今回はタイミングが良かった?
ここで事件が1ヶ月前の沖縄県知事選の最中に起きたら何が起きただろうと思う。
今回は保守系の日米同盟維持、基地容認の候補が大差で反基地の候補に勝ったが、結果が変わっていたかもしれない。
沖縄では米軍問題は選挙の最大争点なのだ。国内の7割の米軍基地が沖縄に集まってるのであるから当然である。
なので、保守系の知事とはいえ今回は強く日本政府に是正を訴えたようだ。ポーズだけでも強気に出ないと次の選挙が危ない。
まあ何も変わらないんだが
「自分の国は自分で守る」は格好いい
そこで興味深いのが、参政党などが打ち出している新しい保守の安全保障論だ。
参政党は日米同盟そのものを否定しているわけではない。「日本の防衛力」「日米同盟」「国際連携」を三本柱としながら、米国依存を減らし、自立的な防衛力と対等な日米関係を目指している。日米地位協定の見直しも掲げている。
これは耳に心地いい。
自分の国は自分で守る。
「アメリカに守ってもらう日本」より、ずっと格好いい。
問題は、その格好いい言葉の後ろに請求書が付いていることである。
自主防衛、おいくらですか
米軍への依存を減らす。
では、その穴を何で埋めるのか。
ミサイル、防空、海空戦力、宇宙、サイバー、情報収集、弾薬、基地、防衛産業。そして最後には核抑止の問題も出てくる。
「自主防衛に賛成です」
ここまでは簡単だ。
では、そのために巨額の国家支出が必要になったらどうするのか。
自衛官が足りなければどうするのか。
基地をどこに置くのか。
自分の町の近くに自衛隊の基地が来ても賛成するのか。
ここまで来ると、急に話が生臭くなる。
自主防衛という言葉は無料だが、自主防衛そのものは無料ではない。
「米軍基地反対」だけでは終わらない
「米軍基地を減らせ」という主張だけなら簡単である。
私だって、自宅の隣に米軍基地が欲しいかと聞かれれば欲しくない。
だが基地を減らすなら、その分の安全保障を誰が担うのかという問題からは逃げられない。
逆に「中国が怖いから米軍基地は必要だ」と言うなら、基地を引き受けている地域の負担を当然のものとして扱うわけにもいかない。
結局、日本は長い間、
「安全保障は欲しい。でも自分で全部守るほど金も覚悟も出したくない」
という絶妙な場所に立ってきた。
合理的ではある。
ただし、その合理性には基地負担という値札が付いている。
格好いい話は、請求書が届いてからが本番だ
自主防衛を議論すること自体は重要だ。
ただ、本当の議論は、
「日本は自分の国を自分で守るべきだ」
と言った瞬間には始まらない。
その次に、
「分かりました。では、そのためにあなたはいくら払いますか」
と聞かれたところから始まる。
基地は嫌だ。
米兵の事件も嫌だ。
アメリカ依存も嫌だ。
増税も嫌だ。
軍事費が増えるのも嫌だ。
自分の町に基地ができるのも嫌だ。
でも日本を守ってほしい。
全部かなえる方法があるなら、私もぜひ教えてほしい。
自主防衛という言葉が格好よく聞こえるのは、まだ請求書が届いていないからである。