「あの人は今」を、なぜ私たちは見てしまうのか

昨日、テレビをつけていたら「あの人は今」みたいな番組をやっていた。

昔、一時期有名だった歌手やタレントの現在を訪ねて、「今はこんな生活をしています」と紹介する。

ものすごく地味な企画なのだが、なぜか見てしまう。

制作費もそれほどかからなそうだ。現在も芸能活動をしている人なら、自分のライブや店を宣伝できるので、出演する側にもメリットがある。

テレビ局にとっては、なかなかコストパフォーマンスのいい企画なのかもしれない。

スターが「普通の人」に戻っている安心感

この手の番組を見る理由は、「あの人、今どうしているんだろう」という好奇心だけではない気がする。

かつてテレビの中で輝いていた人が、普通に年を取り、普通に暮らしている。

それを見ると妙な安心感がある。

芸能人はテレビの中にいると、自分たちとは別世界の人間に見える。大金を稼ぎ、一生華やかな世界で暮らしているような錯覚すらある。

しかし30年、40年経って訪ねてみれば、普通に生活している。

「ああ、この人も同じ人間だったのか」

われわれは、そんな確認作業も含めて見ているのかもしれない。

3人組になる直前に外された一人

昨日の番組で、特に印象に残った話があった。

ある3人組の歌手が登場したのだが、もともとは4人でデビューする予定だったという。

ところがデビュー前に一人が外され、3人組になった。

しかも残った3人はデビュー後にヒットした。

普通なら、外された一人は悔しかっただろう。

ところが、その一人は後に別の形でデビューし、さらに大きなヒットを飛ばした。それだけではなく、その後も長年にわたって音楽活動を続けた。

結果だけ見れば、外されたことがむしろ大成功につながったようにも見える。

ところが、その人は後に若くして亡くなった。死因はいまでも不明である。

そのニュースは私も覚えている。

一方、昨日テレビに出ていた3人は、もう過去の人ではあるが元気で、それぞれ自分の人生を歩んでる。

そこで、なんとも言えない気分になった。

人生は途中で採点すると、答えが変わる

4人から外された瞬間だけ見れば、その一人が負けたように見える。

その後、大きなヒットを飛ばし、長年活躍した時点で見れば、完全な大逆転に見える。

そして何十年も経った昨日、テレビには残った3人が写っている。

また景色が変わる。

別に長生きすれば勝ちで、早く亡くなれば負けという話ではない。

ただ、人生はどの瞬間を切り取るかで、成功や失敗の見え方が簡単に変わってしまう。

若い頃には「あいつは成功した」「自分は負けた」と思っていても、30年後、40年後に同じ採点表が使えるとは限らない。

「あの人は今」という番組が妙に面白いのも、そこなのかもしれない。

昔の成功者や有名人を、数十年後という別の地点からもう一度見る。

すると、当時は決着がついたように見えた話に、まだ続きがあったことに気づく。

人生は長い。途中経過を見て勝敗を決めても、そのあと平気でスコアを書き換えてくる。